WHAT IS GIBIER?
ジビエとは?
ジビエ(仏: gibier)とは、狩猟によって食材として捕獲された野生の鳥獣(イノシシ、シカなど)のこと。フランス語であり、日本語では狩猟動物、獲物と訳されます。近年では、ジビエが供される料理を指して単に「ジビエ」と呼ぶこともあります。
いわゆるジビエ料理ブームにより「名前は聞いたことがある」という方も多いのではないのでしょうか。
ここでは、ジビエの歴史や概要を踏まえながら、鳥獣被害とジビエの関係性、意義、課題やその対策についてご説明します。
ジビエの歴史
ジビエは、もともとヨーロッパで貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化です。
フランス料理界では高級食材として重宝され、高尚で格別な料理として長年愛され続けてきました。ジビエ料理は、自分の領地で狩猟ができるような上流貴族のみが口にできる貴重な素材であったとも言われています。
単に食すだけでなく「動物の尊い命を奪う」代わりに、「命を頂いている」という感謝を捧げる思想がそこには根付いています。
我が国におけるジビエの歴史
日本では明治時代以降に肉食文化が一般的に広まったとされていますが、それ以前にも狩猟・肉食の習慣は存在していました。猟師がイノシシやシカ、キジなどの野鳥などを獲って食し、江戸には狩猟された肉を取り扱う「ももんじ屋」と呼ばれる商店も軒を連ねていたそうです。この意味においては、日本でもジビエを食す文化があったと言えるでしょう。
古くから食文化の1つとして愛されてきたジビエ。
しかし、我が国の現状を見てみると、単に「美味しい食肉を味わう文化」とは言えない状況下にあります。
野生鳥獣による被害は、どのようになっているのでしょうか。
Damage to wildlife
鳥獣の被害
現在、増えすぎた野生鳥獣は農林業ならび自然環境に大きな被害を及ぼしています。具体的には、農作物を食べたり、田畑を荒らしたり、スギやヒノキ等の高山植物を食害などの被害です。
就農意欲の低下や耕作放棄地の増加をもたらし、結果として住処の拡大に繋がっています。
データで見てみましょう。
以下は、農林水産省が発表した平成27年度「野生鳥獣による農作物被害金額の推移」です。
近年は減少傾向にあるものの、依然として170億円以上の損害が生じています。
我が国において、鳥獣における被害は看過できない状況となっているのです。
福岡県では、どの程度の被害が生じているのでしょうか。
福岡県の鳥獣の被害
福岡県でも近年減少傾向にありますが、4億円前後の被害が生じています。
このように全国的に鳥獣の被害に悩まされています。
その鳥獣の被害を食い止めるために、ジビエ狩猟が大きな意義を持ちます。
Significance of gibier
ジビエの意義
①鳥獣被害対策
増えすぎた鳥獣を適正に捕獲することにより、農林水産物への被害を抑えることが出来ます。
②生物多様性・生態系の保護
鳥獣の増加や、生息域の拡大に伴い、従来の生態系にも影響が出ています。ジビエの捕獲は、生物多様性・生態系の保護のみならず、個体数管理の観点からもその役割が期待されています。
Current status of hunting in gibier
ジビエ狩猟の現状
鳥獣被害対策や生物多様性・生態系の保護に寄与するジビエ狩猟ですが、現状ジビエはどこに生息し、どれくらいの捕獲数があり、どの時期にどのような方法で捕獲しているのでしょうか。
イノシシの生息地域
福岡県におけるイノシシの生息地域は、県内のほぼ全域に及んでいます。昭和20年代までは県南部の筑肥山地や釈迦ヶ岳山地、県中央部の英彦山地でしたが、現在では福岡県全域に広がっています。
イノシシ捕獲頭数の推移
イノシシの捕獲頭数は年々増加傾向にあります。平成27年度では約3万頭に達しています。
ジビエの狩猟時期
猟期間は11月15日~翌年の2月15日まで(北海道を除く)が原則とされています。
しかし、福岡県においては「福岡県第二種特定鳥獣管理計画」に基づき、イノシシ・シカの狩猟は11月1日〜3月15日の間、イノシシの箱わな猟については10月15日〜4月15日まで可能です。(平成34年3月31日まで)
ただし、10月15日から10月31日及び、3月16日から4月15日の間においては、イノシシの箱わなに結果としてシカが捕獲された場合に限り、例外としてイノシシと同様に取り扱い(そのまま捕獲処分可)ができます。
ジビエの捕獲方法
ジビエの捕獲方法は主に「罠」と「銃」。
以下のグラフは、狩猟における捕獲方法別割合と頭数の推移です。
The challenge of gibier
ジビエの課題
「福岡県の鳥獣の被害」で示すように、被害金額は年々低減傾向が見られます。県の分析によると「捕獲数の増加や侵入防止柵の整備の促進による結果と想定される。」ことが要因のようです。
しかし、それでもなお課題は残っています。
捕獲した8割を廃棄処分
福岡県では年間にイノシシで2万頭前後、シカでは、4千頭前後捕獲されています。しかし、そのうちわずかな量しか市場に流通していません。全国的に見れば、毎年の捕獲個体数約95万頭のうち、食利用はわずか約2割、すなわち8割前後が未だに廃棄処分されているのです。
その原因は以下に集約されます。
- 自然相手ゆえの安定供給の難しさから大規模の流通が確立されていない
- 行政主導で各地に獣肉処理場が設置されたが、捕獲者との連携や販路の確保が難航している
利活用が進んでいないだけでなく、狩猟者の高齢化や、多額の助成金・捕獲奨励金支出など、今後の捕獲事業の維持についても課題が指摘されています。
What can be done for the task?
課題に対し、何ができるか?
上記で説明したジビエを取り巻く我が国の実情を踏まえた上で、我々に何ができるか?
そこで見出した答えが「産学官連携による糸島ジビエ研究所プロジェクト」です。
本プロジェクトを企業化し、産学官連携の強みを活かした正確な個体数管理や駆除奨励制作の先を見越した捕獲制限、地域密着型かつ他地域展開可能なモデルを構築し、他の地域の課題解決への貢献と、連携による全国レベルの取り組みの実現を目指します。
糸島ジビエ研究所は福岡県糸島市に拠点を置き、綜合警備保障株式会社(ALSOK)、九州大学、市町村・県・国の連携、農業協同組合、地域住民を加えた産学官連携プロジェクトです。
糸島ジビエ研究所では、どのような理念の下で事業を展開しているのか、以下のページでご説明しております。
参考資料
- 鳥獣対策総合案内コーナー(鳥獣対策、狩猟へのご案内など) – 福岡県庁ホームページ : http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/tyoujuu-corner.html#2-0
- 福岡県特定鳥獣(イノシシ)保護管理計画 : http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/270491_52679612_misc.pdf
- 全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成27年度):農林水産省 : http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/170314.html